住宅ローン控除とは?所得税や住民税から控除される金額や要件を簡単に解説

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んだ人の所得税や住民税を軽減してくれる制度です。住宅ローンを組んで住宅を購入した人の、金銭的な負担を軽減する目的で開始されました。
住宅ローン控除によって、税負担を軽減できる金額や制度の対象となる要件、受けられる期間など、詳しくご存知ない方も多いのではないでしょうか。本記事では、住宅ローンの特徴や仕組み、申請方法などを解説していきます。
住宅ローン控除とは年末時点の借入残高の1%を減税してくれる制度
住宅ローンを組んで住宅を購入した人の所得税が、年末時点の借入残高の1%分、減税される制度です。所得税から引ききれなかった控除額は、住民税から控除されます。
例えば、年末時点の借入残高が3,000万円で、所得税額が20万円、住民税額が25万円であったとしましょう。住宅ローン控除額は30万円ですので、所得税額20万円が還付され、残りの控除額10万円が住民税から差し引かれて、税額は15万円となります。
ただし住民税から控除されるのは、前年の所得税の課税対象となる所得(課税所得)の7%と136,500円のどちらか低い金額です。
また、住宅ローン控除の対象となる住宅ローン借入残高は4,000万円まで。ただし、以下にあてはまる住宅を新築もしくは取得※した場合、制度の対象となる借入残高は、最大で5,000万円となります。※建築されてから未使用の住宅に限る
- 認定長期優良住宅:長期にわたって居住が可能な措置が講じられ所定の要件を満たした住宅
- 認定低炭素住宅:二酸化炭素の排出を抑制する措置が講じられ所定の要件を満たした住宅
また住宅ローン控除は、新築住宅を取得したときだけでなく既存住宅(中古住宅)を取得した場合や住宅を増築・リフォームした場合も所定の要件を満たすと受けられます。
住宅ローン控除を受けるための条件とは
住宅ローン控除を受けるための、主な条件は以下の通りです。
- 新築または取得した日から6か月以内に入居し、住宅ローン控除の適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいる
- 建物の床面積が50㎡かつ、床面積の1/2以上を居住用として利用
- 住宅ローン控除を受ける人の合計所得金額が3,000万円以下
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
- 取得した住宅に居住を開始した年とその前2年間、後3年間の計6年間※において「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」や「3,000万円の特別控除の特例」の適用を受けていない
※令和2年3月31日以前に住宅を譲渡した場合は、住宅に居住を開始した年とその前後2年間の計5年間
住宅ローン控除は、銀行やモーゲージバンクなどの金融機関から資金を借り入れた人が対象です。親族や知人、親族の会社、自身が役員である企業などから住宅の購入資金を借りても住宅ローン控除の対象にはなりません。
中古住宅を購入したときの住宅ローン控除の条件
住宅ローンを組んで中古住宅を購入した場合、住宅ローン控除を受けるためには新築住宅の適用要件に加えて、住宅の築年数が以下の年数以内でなければなりません。
- 木造住宅:築20年以内
- マンションのような耐火建築物:築25年以内
※耐火建築物とは、建物の登記簿に記載された家屋の構造が鉄骨造や鉄筋コンクリート造などであるもの
もし購入する住宅が、上記の築年数を超えていても、所定の耐震基準を満たしていると住宅ローン控除を適用できます。
住宅ローン控除の適用期間が13年に延長される特例措置が実施されている
住宅ローン控除を受けられる期間は、最大で10年間です。一般住宅の購入時は最大で400万円、長期優良住宅または低炭素住宅の購入時は最大500万円の控除が受けられます。
また消費税率10%が適用される住宅を購入し、2020年(令和2年)12月31日に入居した場合、控除期間が13年に延長される特例が実施されています。11〜13年目の控除額は「建物の取得価格の2%÷3」「年末時点の借入残高の1%」のどちらか低い金額です。
仮に建物価格が2,000万円、年末時点の借入残高が2,200万円であった場合、金額が低いほうである「建物の取得価格の2%÷3」の133,333円が控除額となります。
新型コロナウイルスの影響で入居要件が緩和されている
新型コロナウイルスの影響により、住宅を建築・リフォームするための資材の納入が遅れ、工事や引き渡しが遅れるケースが相次ぎました。そこで、控除期間が13年に延長される特例措置の入居期限が、2021年(令和3年)12月31日までに延期されています。
ただし、住宅の建築工事請負契約や売買契約が以下の期日までに結ばれていなければなりません。
- 住宅を新築する場合:2020年(令和2年)9月末
- 分譲住宅や既存住宅を購入する場合や増改築等:2020年(令和3年)11月末
2021年の税制改正で特例の入居期限がさらに2年延長される予定
住宅ローン控除の特例措置は、2021年(令和3年)の税制改正によって、入居期限が2年延長される見通しです。もし実現すれば、2021年(令和3年)9月までに建築工事請負契約を結び、2022年(令和4年)12月末までに入居すると、住宅ローン控除の期間が13年となります。
ただし特例の入居期限の延長は、2021年度(令和3年)の税制改正にて実施される予定。制度が実施されるまでは、従来どおりの要件を満たさなければ、住宅ローン控除の適用期間が延長されない点に注意が必要です。
住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要
住宅ローン控除を受けるためには、住所を管轄する税務署にて確定申告が必要です。会社員や公務員などの給与所得者は、初年度のみ確定申告が必要であり、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を申請できます。
また、住宅ローン控除の申告は、借り入れた人ごとにしなければなりません。連帯債務やペアローンでは、借り入れた人が各自で申告をする必要があります。
確定申告をするためには、住宅を取得した翌年の2月中旬から3月中旬までに、必要書類を揃えて住所を管轄する税務署に持参または郵送をします。e-Taxを利用すれば、書類を持参・郵送せずに電子申告のみで申告が可能です。
例年、確定申告の時期は、申告をする人や問い合わせをする人で混み合います。申告方法や必要書類で不明な点がある場合は、早めに税務署へ確認しましょう。
申告時に必要な書類
住宅ローン控除を受けるための確定申告で必要な書類は、以下の通りです。
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 本人確認書類の写し(以下a.bのどちらか)
a.マイナンバーカード
b.マイナンバー通知カードまたはマイナンバーが記載されている住民票
+運転免許証やパスポートなどの本人確認書類
- 建物・土地の登記事項証明書
- 建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
- 住宅ローンの残高を証明する「残高証明書」
なお給与所得の源泉徴収票は、確定申告書を記入する際に必要となるのみで、申告時にコピーを添付する必要はありません。
確定申告書にはAとBの2種類ありますが、会社員や公務員など給与所得のみの方は、確定申告書Aを記入します。
確定申告書や住宅借入金等特別控除額の計算明細書は、手書きでも作成できますが、国税庁のホームページ内にある「確定申告書作成コーナー」を利用すると、必要項目を入力するだけで簡単に作成が可能です。
また、築年数が20年(マンションの場合は25年)を超える中古住宅を購入した人が住宅ローン控除を受ける場合、以下のような住宅の耐震性能を証明する書類の添付が必要です。
- 耐震基準適合証明書
- 建設住宅性能評価書
- 既存住宅売買瑕疵(かし)保険の付帯証明書
購入した住宅が、認定長期優良住宅または認定低炭素住宅の場合は、以下の書類を追加で添付する必要があります。
- 長期優良住宅建築等計画または低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写し
- 住宅用家屋証明書若しくはその写し又は認定低炭素住宅建築証明書
まとめ
●住宅ローン控除を受けられると、10〜13年間にわたって所得税や住民税の負担を軽減できます。ただし、住宅ローン控除は、住宅の種類に応じた上限額が設けられており、控除を受けるためには確定申告が必要です。
●住宅は、人生でもっとも高額な買い物といっても過言ではありません。住宅ローン控除を理解したうえで、返済計画や資金計画を立てることで、住宅の購入後に金銭的な不安を抱えることなく安心して暮らしていけるでしょう。
【コラム執筆者】

品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
金融・保険・不動産ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手保険会社勤務後、人材会社を経て1年間で700本以上の執筆経験を持つwebライターとして活動中。
https://daisakukobayashi.com/