コラム

住宅ローン借入可能額の計算方法とは?金額の目安も解説

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住宅購入の資金計画を立てるときは、ご自身で準備できる資金と、銀行や信用金庫のような金融機関から借り入れられる金額を把握することが大切です。本記事では、金融機関が住宅ローンの融資を希望する人の借り入れ可能額を、どのように計算しているのか解説していきます。

 

 

 

住宅ローンの借入可能額の計算式

 

金融機関は、住宅ローンの借入可能額を、以下の式で計算するのが一般的です。

 

◯借入可能額の計算式

(年収×返済負担率÷12)÷(審査金利◯%で100万円を返済期間◯年で借りた場合の返済額)×100万円

 

返済負担率(返済比率)とは、年収に占める住宅ローンの返済割合です。全期間固定金利型の住宅ローンである「フラット35」では、返済負担率を以下のように設定されています。

 

  • 年収400万円未満:30%

 

  • 年収400万円以上:35%

※平成19年10月1日以降にフラット35を申し込んだ場合

 

 

例えば年収500万円の人は、年間で「500万円×35%=175万円」までを、住宅ローンの返済に充てられると仮定して、融資の審査が進められます。

 

金融機関によっては、年収600万円以上の場合に、返済負担率を40%で計算することもあるようです。

 

審査金利とは、住宅ローンの融資審査時に用いられる金利です。実際の住宅ローンの利息計算をするときの「適用金利」とは、値が異なる場合があります。

 

「審査金利◯%で100万円を返済期間◯年で借りた場合の返済額」は、以下の通りです。

 

 

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借入限度額をシミュレーション

 

ここで、以下の条件で借入限度額をシミュレーションしてみましょう。

 

  • 借り入れる人の年収:400万円

 

  • 返済負担率:35%

 

  • 審査金利:3.5%

 

  • 返済期間:35年

 

 

審査金利3.5%で、100万円を返済期間35年で借りた場合の返済額は、4,133円です。

 

よって住宅ローンの借入可能額を計算すると、以下の結果となりました。

 

・借入可能額

 

=(年収×返済負担率÷12)÷(審査金利◯%で100万円を返済期間◯年借りた場合の返済額)×100万円

=116,666円÷4,133円×100万円

≒2,820万円

※計算結果の1の位は切り捨て

 

このようにモデルケースの条件では、2,820万円までの住宅ローンを借り入れられます。頭金に充てられる自己資金を300万円準備できていれば、3,120万円までの住宅を購入できると考えられます。

 

 

 

他の借り入れがあると借入可能額は減る

 

借入可能額を計算するときは、「マイカーローン」や「教育ローン」など他のローン返済が考慮されます。他の借り入れがあると、住宅ローンの借入可能額も減少するため、住宅購入の予算が少なくなる恐れがあるのです。

 

さきほどのモデルケースの条件において、毎月3万円のマイカーローンの返済がある場合、借入可能額は以下の通りとなります。

 

・借入可能額

 

=(年収×返済負担率÷12-他のローン返済額)÷(審査金利◯%で100万円を返済期間◯年借りた場合の返済額)×100万円

=(116,666円-30,000円)÷4,133円×100万円

≒2,090万円

※計算結果の1の位は切り捨て

 

このように毎月3万円のローン返済があるだけで、借入可能額は730万円も減少しました。借入額を増やしたい場合は、すでに借り入れているマイカーローンや教育ローンの返済を済ませる必要があります。

 

 

 

変動金利の審査金利が高い理由

 

返済期間中に市場の状況に応じて金利が変動する変動金利の場合、住宅ローンの審査金利を3〜4%としている金融機関がほとんどです。

 

2022年1月現在、変動金利の適用金利がおおむね0.4%台であることを考えると、審査金利は高く設定されています。変動金利の審査金利が高いのは、返済途中で金利上昇が起きても返済できる借入額を計算するためです。

 

一方でフラット35のような全期間固定金利は、返済途中に金利が上昇しないため、審査金利が借入時の金利と同じ値に設定されています。

 

 

 

住宅ローンの借入可能額の早見表 

 

金融機関の審査金利を3〜4%と仮定し、返済期間を35年とした場合、年収ごとの住宅ローン借入可能額の目安は、以下の通りです。

 

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金融機関によって返済負担率や審査金利の設定は異なり、顧客に向けて開示されていません。上記の借入可能額の早見表は、あくまで住宅購入の予算を決める際の目安としてご利用ください。

 

 

 

年収の何倍が適切?住宅ローンの借入額の決め方

 

住宅ローンの借入額は、金融機関が融資してくれる金額である借入可能額ではなく、ご自身が返せる金額をもとに判断する必要があります。

 

ひと昔前は、「住宅ローンの借入額は年収の5倍が目安」といわれていました。しかし2021年1月現在、年収の6倍や7倍の住宅ローンを組む人は珍しくありません。住宅価格が高騰し続けている一方で、住宅ローン金利は年々低下しており、借入額が増えたためです。

 

そのため住宅ローンの借入額を決めるときは、完済できる見込みがあるかを考えましょう。例えば、年収が400万円で返済期間が35年の場合、住宅ローンの借入可能額は2,630万〜3,030万円が目安です。

 

 

仮に借入額が2,800万円、返済期間35年、変動金利0.475%で借り入れた場合、返済額は以下の通りです。

 

  • 毎月の返済額:72,374 円

 

  • 総返済額:30,397,080 円(うち利息分:2,397,080 円)

 

 

実際に住宅ローンを借り入れるときは、毎月72,374 円を返済していけるのかを考える必要があります。また変動金利を選択する場合は、途中で金利上昇が起きても対処できるのかも検討しなければなりません。

 

 

 

借入額はライフプランを踏まえて決める

 

住宅ローンの借入額や住宅購入の予算を決める際に必要不可欠なのが、今後のライフプランです。年収が同じであっても、年齢や家族構成などによって、今後訪れるライフイベントが異なるため、返していける住宅ローンの借入額は異なります。

 

例えば、同じ年収500万円の方でも、小さな子どもがいる世帯主は将来的に教育費がかかるため、独身の方よりも住宅ローンの借入額を少なくする必要があると考えられます。

 

より厳密に住宅ローンの借入額を計算したい方は、ファイナンシャルプランナーに今後のライフプラン表を作成してもらうと良いでしょう。ライフプラン表には、今後の収支計画が記載されているため、住宅ローンの借入額や住宅購入予算を判断する際に役立ちます。

 

仮に、3,000万円の借り入れを検討しているとしましょう。

 

ライフイベント表を確認した結果、住宅ローンを返済しながら子どもの教育費を支払うことができ、老後に目標とする金額の貯蓄ができていれば、3,000万円の住宅ローンを組めると考えられます。

 

住宅ローン購入予算の決め方については、こちらの記事 でも解説しておりますので、併せてご一読ください。

 

 

 

 

まとめ

 

・住宅ローンの借入可能額は、年収や返済負担率、審査金利などをもとに計算されます。

 

・返済負担率や審査金利は、金融機関によって設定が異なります。

 

・よく検討せずに、住宅ローンを借入限度額いっぱいまで借りるのはおすすめできません。

 

・今後のライフプランを立てたうえで、完済できる見込みのある金額を借り入れることが、住宅ローンを組むうえで大切なポイントです。

 

 

 

 

 

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/