長期優良住宅のメリットとデメリットとは?検討時のポイントを解説

長期優良住宅には「快適に暮らせる」「税金を優遇してもらえる」など、さまざまなメリットがあるため、多くの方に選ばれています。
一方で長期優良住宅にもデメリットがあるため、よく理解したうえで取得を検討することが大切です。
本記事では、長期優良住宅のメリットやデメリットをわかりやすく解説します。
長期優良住宅とは
長期優良住宅(認定長期優良住宅)とは、長期間にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた高性能な住宅のことです。
以下5つのすべての措置を講じたうえで、必要書類をそろえて申請をして認定を受ける必要があります。
- 長期に使用するための構造及び設備を有していること
- 居住環境等への配慮を行っていること
- 一定面積以上の住戸面積を有していること
- 維持保全の期間、方法を定めていること
- 自然災害への配慮を行っていること
※出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の長期優良住宅認定制度の概要について
また、長期優良住宅と認定されるためには「劣化対策」や「維持管理・更新の容易性」「耐震性」「省エネルギー対策」「可変性」などが所定の基準を満たしている必要があります。
長期優良住宅のメリット
長期優良住宅の主なメリットは、以下の通りです。
- 快適な家に長く住み続けられる
- 住宅ローン控除が優遇される
- 投資型減税を受けられる
- 不動産取得税・登録免許税・固定資産税の負担が軽減される
- 住宅ローンの金利が優遇されることがある
快適な家に長く住み続けられる
長期優良住宅は、所定の劣化対策が施されており、長年にわたって使用できる構造躯体を有しています。
構造躯体よりも耐用年数が短い配管設備については、清掃や修理、更新をしやすくするための措置が講じられています。
また、認定基準には省エネルギー性が含まれており、断熱性能は高水準です。
暑い夏から寒い冬まで室内を適度な温度に保ってくれるため、1年を通して快適に暮らせるでしょう。
住宅ローン控除が優遇される
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人が利用できる税の優遇制度です。
取得したマイホームに2025年末までに入居すると「年末時点の借入残高×0.7%」を所得税と一部の住民税を減税してもらえます。
控除期間は、新築住宅と買取再販住宅は原則13年、既存住宅(中古住宅)は10年です。
住宅ローン控除の対象となる借入額には上限があります。長期優良住宅をはじめとした高い環境性能がある住宅は、以下の通り新築と中古のどちらも住宅ローン控除の対象となる借入額が高く設定されています。

投資型減税を受けられる
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んだ人が対象であり、現金一括で購入すると利用できません。
そこで、住宅ローンを利用せずにマイホームを購入した人が受けられる税の優遇制度として「投資型減税」が実施されています。
投資型減税は、長期優良住宅をはじめとした高い環境性能がある住宅を新築したとき、性能を強化するために支払った費用(標準的な性能強化費用)の10%を所得税から控除してくれる制度です。
制度の対象となる性能強化費用の限度額は650万円が上限です。
投資型減税を利用するためには、令和5年12月31日までに取得した住宅に入居をする必要があります。
不動産取得税・登録免許税・固定資産税の負担が軽減される
長期優良住宅を新築し令和6年3月31日までに入居すると、不動産取得税や登録免許税、固定資産税の負担が軽減されます。
不動産取得税は、不動産を購入したときに1度だけ支払う税金です。
税額は「課税標準額×税率」で税額が計算されます。課税標準額は、市町村が算出する不動産の価格である固定資産税評価額と基本的には同額です。
建物部分の税額を計算する際は、課税標準額から一定金額が控除されます。
一般的な住宅の場合、控除額は最大1,200万円ですが、長期優良住宅であれば最大1,300万円となります。
登録免許税は、所有権移転登記や所有権保存登記をする際に支払う税金です。
長期優良住宅は、所定の要件を満たしていると一般的な住宅よりも税率が低くなり、登録免許税の税額が少なくなります。
※出典:国土交通省「認定長期優良住宅に対する税の特例」
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有している人が支払う税金です。
固定資産税には減額措置があり、所定の要件を満たすと一定期間の税額が1/2となります。
長期優良住宅は、一般住宅よりも減額措置の適用期間が長くなります。
※出典:国土交通省「認定長期優良住宅に対する税の特例」
住宅ローンの金利が優遇されることがある
民間金融機関と住宅金融支援機構が共同で提供する「フラット35」は、全期間固定金利型の住宅ローンです。
フラット35にはさまざまな金利引き下げメニューがあり、所定の要件を満たすと借入金利が一定期間引き下げられます。
2022年4月以降に長期優良住宅を取得する場合、フラット35Sの金利Aプランと、フラット35維持保全型の2つの金利引き下げメニューの併用が可能です。
金利の引き下げ幅は、返済開始から5年間は−0.5%、6〜10年目までは−0.25%となります。
長期優良住宅のデメリット
長期優良住宅の主なデメリットは、以下の通りです。
- コストがかかりやすい
- 定期的に点検をしなければならない
- 着工に時間がかかる場合がある
コストがかかりやすい
長期優良住宅は耐震性や劣化対策、省エネルギー性能などが所定の基準を満たしていなければなりません。
基準を満たす措置を講じるために、資材や人件費などのコストがかかり取得費用が高額になる可能性があります。
また、長期優良住宅を申請するときに数万円の費用がかかります。
申請に必要な書類の作成を不動産会社に作成してもらったときの手数料を合わせると、長期優良住宅の申請時には20〜30万円ほどの費用がかかるのが一般的です。
定期的に点検をしなければならない
長期優良住宅に入居したあとは、申請時に提出した維持保全計画にしたがって定期的に点検をしていかなければなりません。
劣化や性能の低下などがあると修繕や改良が必要になることもあるため、一般的な住宅よりも手間や費用がかかりやすいといえるでしょう。
着工に時間がかかる場合がある
長期優良住宅の着工ができるのは、所管行政庁の認定を受けたあとです。
そのため、一般的な住宅よりも建築の着工が1週間〜1か月ほど遅くなることがあります。
申請書類の作成や手続きに時間がかかると、さらに着工が遅れてしまう可能性があります。
まとめ
- 期優良住宅は、一般的な住宅よりも住宅ローン控除の借入限度額が高い
- 住宅ローンを組まずに長期優良住宅を購入した場合は投資型減税を利用できる
- 長期優良住宅を購入すると、不動産取得税や登録免許税、固定資産税の負担が軽減される
- 長期優良住宅には「コストがかかりやすい」「定期的に点検をしなければならない」「着工に時間がかかる場合がある」といったデメリットがある」
【コラム執筆者】

品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/