
相続に関する手続きを進める前提として、必須となるのが相続人調査と相続財産調査。
誰が相続人で、どのような相続財産があるのかを把握できないことには、遺産分割協議も、相続税の申告手続きも進めることができません。
今回は、相続財産を調査する際に便利な、預貯金の全店照会について解説したいと思います。
相続財産調査として預貯金を調査する
エンディングノートなどで、故人が保有する銀行口座情報を残している場合は、その情報をもとに、残高証明書や取引履歴を取得することが出来ます。
しかし、そのような情報がない場合、同一金融機関の複数の支店に口座を保有している場合もあり、これを一つ一つ調べるには大変な労力がかかります。
そこで活用したいのが「全店照会」と呼ばれるものです。
銀行の窓口で全店照会を依頼すると、同じ銀行内の異なる支店の口座についても調査をしてもらうことができます。
これで、全店照会を依頼した銀行に保有する全ての口座を洗い出すことが可能となります。
どの金融機関に全店照会を依頼するかは絞りこむ必要がある
全店照会を依頼すると、照会の依頼をした銀行に保有する口座を洗い出すことはできますが、あくまで、その照会をかけた銀行に限っての話です。
全国には、多数の金融機関が存在するため、その多数の金融機関のうち、どの金融機関に照会をかけるかは、ある程度、目星をつけて調査するしかありません。
故人の持ち物はもちろん、郵便物や金融機関からのノベルティ、ネットバンキングを利用されている可能性も考慮してパソコンやスマホのメールやweb閲覧履歴などを確認することになります。
手がかりが見つからない場合には、多くの人が利用しているであろう都市銀行や、故人が暮らしていた地域の地方銀行、信用金庫などにひとつひとつ照会をかけていくことになります。
全店照会を依頼する際の注意点
全店照会を依頼する際には、金融機関によって多少の違いはありますが、故人が亡くなっていることの証明書(死亡が確認できる戸籍謄本)等が必要になります。
それらの証明書の提出により、金融機関が口座名義人の死亡を確認すると、それ以降、その名義人の持つ口座は凍結され、原則として、引き出しや引落が一切できなくなるので注意が必要です。
預金などの相続財産調査には専門家の手を借りることも可能
相続手続き・遺産整理に必須となる相続財産調査には、銀行口座だけではなく、様々な財産を調査する必要があります。
しかし、その後、口座の凍結解除のために遺産分割協議書を作成したり、不動産の名義変更手続きなど、専門的な知識が要求されるものも少なくありません。
そのため、専門的な調査については司法書士などの専門化の手を借りると一連の作業を一本化できるため、手続きがスムーズになります。
【コラム執筆者】

髙橋 朋宏
プロフィール
経堂司法書士事務所代表司法書士。一般社団法人相続総合支援協会理事。不動産と相続に関する分野に専門性を有する。難しいことを分かりやすく説明することを得意とし、ラジオ出演、新聞・雑誌への寄稿、セミナー、講演活動などを行うタレント文化人。
経堂司法書士事務所|世田谷区で30年の実績 (kyodo-office.com)