コラム

住宅ローンの全期間固定金利はどんな仕組み?メリットやデメリットも解説

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「低金利の時代は、全期間固定金利で住宅ローンを借り入れるのが正解」という意見を、目にされた方もいらっしゃるでしょう。全期間固定金利は、返済負担が途中で変わらない点が安心です。しかし、低金利の時代だからといって、全期間固定金利で借り入れるのが正解とは限りません。

 

本記事では、全期間固定金利の仕組みやメリット、デメリットなどを解説していきますので、住宅ローンの金利タイプを選ぶ際に、ぜひご活用ください。

 

 

 

 

住宅ローンを全期間固定金利で借り入れるメリットとデメリット

 

全期間固定金利は、住宅ローンの借り入れから完済まで、金利が固定される金利タイプです。返済途中で経済情勢が変化しても、住宅ローンの利息計算に用いられる金利は変わりません。

 

全期間固定金利にも他の金利タイプと同じように、メリットもあればデメリットもあるため、それぞれを比較したうえでご自身に合っているか判断することが大切です。

 

ここでは、全期間固定金利のメリットとデメリットを分かりやすく解説していきます。

 

 

 

 

 

住宅ローンを全期間固定金利で借り入れるメリット

 

全期間固定金利型住宅ローンのメリットは、主に以下の2点です。

 

  • 金利上昇を心配しなくて済む

 

  • 毎月の返済額が決まるため返済計画や将来のライフプランが立てやすい

 

 

全期間固定金利の住宅ローンは、融資が実行されたときに、毎月の返済額と返済総額が確定します。 返済途中で市場の金利が上昇しても、利息計算に用いられる住宅ローン金利は上昇しないため、途中で返済負担が増える心配はありません。

 

2020年12月現在、住宅ローンは底値と言っても過言ではないほど低下しています。住宅ローンの返済期間は、20年や30年にわたることも珍しくありません。変動金利で借り入れた場合、今後は金利が下がる可能性よりも、上がる可能性の方が高いといえるでしょう。

 

全期間固定金利では、借入時の金利が完済まで適用されるため、金利上昇に対する不安を抱えることなく住宅ローンを返済していけます。

 

また全期間固定金利型は、毎月の返済額が完済まで一定であるため、子どもが成長し毎月の教育費が増えたときに、返済負担も増えて家計の収支計画が狂うこともありません。

 

 

 

 

住宅ローンを全期間固定金利で借り入れるデメリット

 

全期間固定金利の住宅ローンには、主に以下2点のメリットがあります。

 

  • 借入当初の毎月の返済額が高い

 

  • 世の中の金利水準が変わらない場合、返済総額は高額になる

 

 

全期間固定金利は、毎月の返済額が一定である代わりに、借入当初の金利が他の金利タイプよりも高く設定されています。2020年12月現在、変動金利は0.4%台ですが、全期間固定金利は1%を超えるケースがほとんどです。

 

よって全期間固定金利は、他の金利タイプで借り入れたときよりも、毎月の返済額は高く、返済額に占める利息の割合は多く、元金の減るスピードは遅いです。

 

また全期間固定金利は、市場金利の上昇幅やタイミングによっては、毎月の返済額や返済総額がもっとも高くなるリスクがあります。

 

全期間固定金利を選んだことで損をする可能性があることを、理解したうえで借り入れることが大切です。

 

 

 

 

民間金融機関の全期間固定金利とフラット35の違い 

 

全期間固定金利には、大きく分けて銀行のような民間金融機関が取り扱うものと、「フラット35」の2種類があります。フラット35とは、民間の金融機関と住宅金融支援機構が共同で取り扱う住宅ローンです。金利の値や融資手数料は、申し込みをする金融機関によって異なります。

 

では、民間金融機関の全期間固定金利とフラット35には、どのような違いがあるのでしょうか? 1つずつ解説します。

 

 

 

 

団体信用生命保険の加入義務

 

団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンを返済する人が亡くなったり、所定の高度障害状態となったりした場合の保険です。返済する人が万一の場合、保険会社から支払われた保険金で住宅ローンが完済され、返済義務がなくなります。

 

民間金融機関は、団信への加入を住宅ローンの融資条件としているケースがほとんどです。

 

団信に加入する際は、住宅ローンを借り入れる人の健康状態を告知し、保険会社による審査を受けなければなりません。過去に大病を患った経験がある人やすでに病を抱えている人などは、団信に加入できず、住宅ローンを借り入れられない可能性があります。

 

一方で民間金融機関の団信は、保険料が金融期間の負担となることが多いです。特約を付帯する場合や、引受基準が緩和された「ワイド団信」に加入する場合、住宅ローン金利に0.1〜0.3%を上乗せして保険料を支払うのが一般的です。

 

対してフラット35は、団信への加入が融資条件ではありません。金利から0.2%を差し引くことで、団信(新機構団信)に加入しなくても、フラット35を借り入れられます。

 

 

 

 

融資審査の基準

 

住宅ローンを申し込んだ場合、金融機関によって借り入れた人の年収や職業、他の借入状況、物件の担保価値などをもとに融資審査が行われます。審査に通過できなければ、住宅ローンを借り入れできません。

 

民間金融機関の住宅ローン審査は、借り入れる人物の年収や勤続年数などが重視されます。そのため転職して間もない人や自営業者のような、収入の安定性が低いと判断されやすい人は、借り入れが難しいかもしれません。

 

フラット35は、転職直後の人や自営業者でも審査に通過しやすいと言われています。一方で、住宅の技術基準や床面積などが、住宅金融支援機構の定める基準に適合していなければ、フラット35は借り入れできません。

 

 

 

 

金利

 

民間金融機関の全期間固定金利は、融資審査が厳しい代わりにフラット35よりもやや低い数値に設定されています。

 

フラット35の金利は、借入期間や融資率(購入価格に対する借入額の割合)によって異なる仕組みです。借入期間が長く、融資率が9割を超えると、フラット35の借入金利は高くなります。

 

またフラット35には、「【フラット35】S」や「【フラット35】子育て支援型」など、要件を満たすと借り入れから一定期間の金利が引き下げられる制度があります。

 

 

 

 

全期間固定金利の住宅ローンの注意点

 

最後に、全期間固定金利の住宅ローンを借り入れるときの注意すべき点を、2つご紹介します。

 

 

 

 

他の金利タイプと返済シミュレーションを比較して選ぶ

 

全期間固定金利は、返済期間中に利息計算に用いられる金利が上昇しません。しかし、以下のようなケースでは、返済途中で金利が上昇しても、全期間固定金利の返済総額の方が、変動金利よりも多くなります。

 

  • 返済期間中に市場の金利が上昇しなかった場合

 

  • 金利の上昇幅が小さかった場合

 

  • 借り入れから20年や30年が経過して金利上昇が起こった場合

 

 

全期間固定金利には、借入時に適用される高い金利を負担し続けるリスクがあります。他の金利タイプで借り入れた場合の返済シミュレーションと比較し、借入当初の返済額が高くなっても金利を固定させた方が安心できるか、慎重な判断が必要です。

 

 

 

 

契約を締結したときと融資の実行時で金利が異なる場合がある

 

住宅ローンの利息計算に用いられる金利は、購入した物件が引き渡されて融資が実行されたタイミングで決まります。

 

住宅の売買契約を結んでから、引き渡されるまで1カ月以上かかるのが一般的です。例えば、住宅の契約時に全期間固定金利が1.31%であっても、融資の実行時には1.32%になっているケースもあります。

 

契約を締結したときと融資が実行されたときで、金利が0.01〜0.02%ほど異なる可能性がある点に注意しましょう。

 

 

 

 

まとめ

 

●全期間固定金利は、金利上昇に不安を抱える心配がない点や、毎月の返済額が完済まで変わらない点がメリット


●市場の金利によっては、全期間固定金利の返済総額がもっとも高くなる場合があります。返済シミュレーションを確認したうえで、全期間固定金利がご自身にとって適切かを考えることが大切

 

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/