コラム

中古住宅の購入時に住宅ローン控除を受ける方法は?要件や申請方法を解説

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住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを購入した人が受けられる税金の優遇制度です。

 

中古住宅を購入した人も、一定の要件を満たせば住宅ローン控除の対象となり、所得税や住民税の減税が受けられます。

 

今回は、住宅ローン控除の制度内容や満たすべき要件、必要な手続きなどを解説します。

 

 

住宅ローン控除の基礎知識

 

まずは、住宅ローン控除の制度内容をみていきましょう。

 

 

住宅ローンの利用者が受けられる税の優遇制度

 

住宅ローン控除を適用できると「年末時点の住宅ローン残高×控除率」が所得税から控除されます。

 

所得税から引き切れなかった分は、一定金額を上限に住民税から控除することも可能です。

 

購入した中古住宅に入居するタイミングが2022年(令和4年)から2025年(令和7年)のあいだである場合、控除率は0.7%、控除期間は10年間です。

 

例えば、年末時点のローン残高が2,000万円の場合、控除額は「2,000万円×0.7%=14万円」となります。

 

 

省エネ性能が高い中古住宅は借入限度額が高くなる

 

住宅ローン控除には、控除額を計算する際に対象となるローン残高に制限(借入限度額)が設けられています。

 

中古住宅を購入する場合、住宅ローン控除の借入限度額は以下の通りです。

 

1735529011-5xU3U.png※出典:国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

 

認定長期優良住宅や認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅など、所定の省エネ基準を満たしている性能が高い中古住宅は、住宅ローン控除の借入限度額が高く設定されています。

 

 

中古住宅の住宅ローン控除の要件

 

続いて、中古住宅を購入する場合の住宅ローン控除の要件を解説します。

 

 

耐震基準の適合が必須に

 

中古住宅を購入したあとに住宅ローン控除を受けるためには、以下のAまたはBのいずれかに該当する必要があります。

 

A.家屋が昭和57年1月1日以降に建築されている

B.家屋が昭和56年12月31日以前に建築されており以下のいずれかに該当している

a.取得する日の前2年以内に、地震に対する安全性が技術的基準に適合していると証明されたもの(いわゆる耐震住宅)であること

b.上記AやB-aに該当しない住宅(要耐震改修住宅)の場合は「1.取得日までに耐震改修の申請を行っている」「2.住み始める日までに耐震基準に適合する耐震改修を完了し、所定の証明を受けている」の両方を満たしていること
※参考:国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

 

購入する中古住宅が、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅などである場合は、上記条件のAまたはB-aに該当する必要があります。

 

B-bのみに該当する認定長期優良住宅や認定低炭素住宅などは、住宅ローン控除の対象外です。

 

 

床面積や所得なども指定の範囲である

 

住宅ローン控除を受けるためには、他にも以下の要件を満たす必要があります。

 

  1. 中古住宅の取得の日から6か月以内に入居していること
  2. 控除を受ける年の12月31日まで継続して居住していること
  3. 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  4. 住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること
  5. 10年以上にわたって分割して返済する住宅ローンを利用していること
  6. 2以上の住宅を所有している場合には、主に居住の用に供する住宅であること
  7. 居住した年とその前2年の計3年間、および居住した年の翌年以後3年以内に、特定の譲渡所得に関する課税の特例を受けていないこと
  8. 住宅の取得が、生計を一にする親族や特別な関係のある者からの取得ではないこと
  9. 贈与による住宅の取得ではないこと
    ※参考:国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

 

新築住宅や買取再販住宅※の場合、購入する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満でも、その年の所得が1,000万円以下で住宅ローン控除の対象となります。
※不動産会社が買い取りをして所定の改修工事をした上で再販される住宅

 

しかし、中古住宅の場合はそのような要件は設けられていません。

 

 

中古住宅の購入時に住宅ローン控除を受けるための手続き

 

住宅ローン控除を受けるためには、確定申告や年末調整で所定の手続きが必要です。

 

 

初年度は確定申告が必要

 

中古住宅を購入して住宅ローン控除を受ける場合、最初の年は確定申告が必須です。

 

確定申告とは、1年間の所得と税金を計算して税務署に申告する手続きのことです。

 

住宅ローン控除を受ける際は、確定申告書に必要事項を記入し、所定の書類を添付して、お住まいの住所を管轄する税務署に提出します。

 

確定申告の期間は、マイホームを購入した翌年の2月16日〜3月15日です。

※土日祝によって前後します。

 

 

2年目以降は年末調整でも申請が可能

 

2年目以降は、勤務先の年末調整で住宅ローン控除の申請をすることもできます。

 

年末調整とは、会社が年末に従業員の1年間の給与や所得税を計算し、給与天引き分との過不足を精算する手続きのことです。

 

年末調整で住宅ローン控除を受けるためには、下記の書類を勤務先に提出します。

 

  1. 年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
  2. 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

 

上記1の書類は、初年度に確定申告で住宅ローン控除を申告したあとに税務署から送付されてきます。

 

年末調整の時期は10月中旬が一般的です。

 

具体的な期間や申請方法は勤務先によって異なる場合があるため、年末調整で住宅ローン控除を申請するときは、事前に担当の部署に確認することをおすすめします。

 

 

中古住宅の住宅ローン控除を受けるための必要書類と流れ

 

最後に、確定申告をする際に必要となる書類や手続きの流れをみていきましょう。

 

 

確定申告時の必要書類

 

中古住宅を購入した人が確定申告で住宅ローン控除を申請する際は、以下の書類が必要です。

 

  1. 確定申告書
  2. 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
  3. (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書※1
  4. 金融機関等から交付された住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
  5. 家屋の登記事項証明書などで床面積が50㎡以上であることを明らかにする書類
  6. 家屋の工事請負契約書または家屋の売買契約書の写しなどで家屋の取得対価の額を明らかにする書類
    ※1:連帯債務がある場合は(付表)連帯債務がある場合の住宅借入金等の年末残高の計算明細書も必要

 

購入する中古住宅が1981年(昭和56年)12月31日以前に建築された住宅の場合は、以下のいずれかが必要です。

 

  • 耐震基準適合証明書
  • 建設住宅性能評価書の写し
  • 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に係る付保証明書

 

上記の他にも、状況に応じて以下のような書類を添付する必要があります。

 

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住宅ローン控除の申請に必要な書類は多岐にわたるため、中古住宅を購入したときは早めに必要書類を確認して収集を始めましょう。

 

※参考:国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

 

 

確定申告の流れ

 

確定申告の流れは以下の通りです。

 

  1. 必要書類を揃える
  2. 確定申告書を作成する
  3. 確定申告書と添付書類を提出する

 

申告書類の提出方法は「税務署の窓口に持参する」「郵送する」「e-Taxで電子申告をする」の3種類です。

 

e-Taxであれば、24時間いつでも申告できますが、利用の際はマイナンバーカードとそれを読み取れるスマートフォンが必要です。

 

 

まとめ

 

  • 住宅ローンを組んで中古住宅を購入したときも、所定の要件を満たせば住宅ローン控除により所得税や住民税が軽減される
  • 住宅ローン控除の対象となるのは所定の耐震性能がある中古住宅
  • 住宅ローン控除を受けるためには原則として確定申告が必要だが、2年目以降は年末調整での申請も可能

 

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/