実家じまいとは?進め方や実施するタイミングを解説

「実家じまい」とは、簡単にいえば親が暮らした家を整理して処分することです。
少子高齢化や核家族化が進み、親と子が離れて暮らすことが当たり前になった現代では、「誰も住まなくなった実家をどうするか」が多くの方にとって悩みの種となっています。
本記事では、実家じまいの基礎知識や実施するタイミング、手順などを分かりやすく解説します。
実家じまいの基礎知識
実家じまいでは、家の中にある家財道具の片付けや不用品の処分に加え、土地や建物の売却なども行います。
ここでは、実家じまいで行うことと家じまいとの違いをみていきましょう。
実家じまいは「家の処分」と「心の整理」
実家じまいは、単に不動産や物を処分するだけの作業ではありません。
実家には一般的に家族の思い出が詰まっているため、物理的な片付けと同時に「心の整理」を行うことも重要となります。
実家を処分することは、生まれ育った場所や親との思い出の場所を失うことでもあります。
事務的に作業を進めてしまうと、寂しさや罪悪感などを感じてしまうかもしれません。
物の整理を通じて親の人生に触れ、家族の歴史に一区切りをつける。
そういった気持ちの面での整理も、実家じまいの1つです。
家じまいとの違い
「実家じまい」とよく似た言葉に「家じまい」があります。
この2つは「誰の家を、誰が片付けるか」が異なります。
実家じまいは、親の家を主に子ども世代が主体となって片付けることです。
親の意向を確認したり、兄弟姉妹と話し合ったりなどする必要があるため、意見がまとまるまでに時間がかかることがあります。
一方の家じまいは、自分自身が住んでいる家を自分で整理して処分することです。
自身の判断で進められるため、実家じまいよりも周囲との調整は少なく済むでしょう。
実家じまいをするタイミング
実家じまいをいつ始めるべきかに正解はありませんが、一般的に以下の3つのタイミングが挙げられます。
- 親が元気なうち
- 親が施設に入居するタイミング
- 親が亡くなった後(相続発生後)
それぞれのタイミングには、メリットと注意点があります。
親が元気なうちに始める
親が元気なうちに実家じまいを始めると、何を残すか本人と相談して決められます。
思い出話に花を咲かせながら整理ができ「誰に何を譲るか」を親本人の口から直接聞くこともできるため、親族間で揉めるリスクも減らせるでしょう。
ただし、親が「まだここに住みたい」と思うことで作業や手続きが進まないケースもあります。無理に進めるのではなく、親の気持ちを一番に考えて計画を立てることが大切です。
親が施設に入居するタイミングで始める
親が有料老人ホームなどの施設に入居し、家が空き家になったタイミングで実家じまいを始めると片付けや売却の準備に取り掛かりやすくなります。
家を売ったお金で、施設の入居費用を賄うことも可能です。
一方で、施設での暮らしが合わずに「家に帰りたい」と親が希望する可能性もゼロではありません。
家を急いで手放して後悔しないよう、親が施設に入居した後も少し様子を見てから決めるなど慎重に判断しましょう。
親が亡くなった後(相続発生後)に始める
親が亡くなり、実家が空き家になったタイミングで処分を進める人も少なくありません。
相続発生後に実家じまいをする場合、子どもなどの相続人が主体となって家の売却や家財道具の処分などを進められます。
また、親が亡くなった後に実家じまいをすると相続税の負担を抑えることも可能です。
不動産を売却して現金で相続するよりも不動産のまま引き継ぐほうが、相続税を計算する際の価値が低くなるためです。
一方で、親を亡くしたばかりの悲しみの中で遺品を片付けるのは、精神的につらい作業かもしれません。
思い出の品を見るたびに手が止まってしまい、作業がなかなか進まないというケースもよくあります。
実家じまいの進め方|5つのステップで完了までの流れを解説
実家じまいは、建物の処分だけでなく、家財道具の整理や相続手続きなど行うべきことは多岐にわたります。主な手順は以下の通りです。
- 親族会議で「誰が・いつ・どうするか」の方向性を決める
- 不用品の片付け・遺品整理・仏壇の供養を行う
- 不動産会社に査定を依頼し、資産価値を把握する
- 「売却」「解体」「活用」などの最終処分方法を決定する
- 契約・引き渡しおよび各種名義変更の手続きを行う
1.親族会議で「誰が・いつ・どうするか」の方向性を決める
実家じまいを円滑に進めるためには、作業や手続きに着手する前に親族で話し合い、意思を統一させることが重要です。
親族間の合意がないまま進めると、後になって金銭的な負担や建物の扱いなどを巡り、大きなトラブルになる恐れがあります。
実家じまいをする際は、親族間で以下の3点について話し合うと良いでしょう。
- 方向性:家を売却するのか、賃貸に出すのか、あるいは誰かが住むのか
- 費用負担:片付け費用、固定資産税、解体費用などを誰がいくら出すか
- 役割分担:業者の手配や書類手続きといった実務を誰が担当するか
親が健在であれば、まずは本人の気持ちを尊重し「今後どうしたいか」を聞くことから始めましょう。
全員が納得できるゴールを最初に共有しておくことが、最後まで揉めずに進めるためのポイントです。
2.不用品の片付け・遺品整理・仏壇の供養を行う
実家じまいの方向性が決まったら、家財道具の仕分けと処分に取り掛かりましょう。
家族が長年暮らした家には一般的に膨大な量の家財道具があり、仕分けや処分などに想像以上の時間と労力がかかりやすいため、計画的に進めることが大切です。
まずは現金、預金通帳、権利証などの重要書類を探しましょう。
その後、残りの家財道具について「残す」「家族や知人などに譲る」「処分する」の3つに分類します。
仏壇や神棚を処分する際は、魂を抜くための「閉眼供養(へいがんくよう)」を行います。
自分たちだけで手が回らない場合は、遺品整理業者や不用品回収業者へ依頼するのも1つの方法です。
3.不動産会社に査定を依頼し、資産価値を把握する
家財道具の整理・処分と並行して不動産会社に査定を依頼し、実家がいくらで売れそうなのかを確認しておきましょう。
家の正確な資産価値を知らないことには、売却や活用などさまざまな選択肢の中から適切なものを判断するのが難しくなります。
査定は1社だけでなく、複数の会社に依頼するのが良いでしょう。
提示される金額や算出根拠、販売戦略を比較検討することで、価格相場をより正確に把握しやすくなり、好条件で売却できる不動産会社を選定しやすくもなります。
4.「売却」「解体」「活用」などの最終処分方法を決定する
続いて、査定結果と家族の意向などを踏まえて、実家をどのようにするのか決めます。
建物の状態や立地条件などによって、適した選択肢は異なります。
主な選択肢は以下の通りです。
- 現況引き渡し(そのまま売る):比較的費用をかけずに手放せるが、建物が古いと売れにくい場合がある
- 解体して売却(更地にする):解体費用はかかるが、土地として売ったほうが買い手がつきやすくなる場合がある
- 活用する(賃貸・駐車場):家賃収入が得られる一方、リフォーム費用や管理の手間が発生する
それぞれのメリットや注意点を比較し、家族全員が納得できる方法を選びましょう。
判断に迷う場合でも「とりあえず空き家のままにする」ことだけは避けることをおすすめします。
維持費がかかり続けるうえ、建物の老朽化による倒壊リスクも高まるためです。
また、空き家の管理を放置すると自治体から管理が不十分な「管理不全空き家」に指定されると、固定資産税の優遇措置が解除され、税負担が最大6倍となります。
5.契約・引き渡しおよび各種名義変更の手続きを行う
実家をどのようにするか決まったら、不動産会社や解体業者などと契約を結び、手続きを進めていきます。
家を売却する場合、一般的な流れは以下の通りです。
- 媒介契約の締結:依頼する不動産会社と契約を結ぶ
- 売り出し価格の決定:査定額や周辺の相場を参考に、いくらで販売するかを決める
- 売却活動と購入申し込み:インターネットの不動産ポータルサイトや広告などで買い手を募集し、購入希望者からの条件交渉やすり合わせを行う
- 不動産売買契約の締結:買主と売買契約書を取り交わす
- 決済と引き渡し:売却代金を決済し、同時に鍵の引き渡しと登記申請を行う。
- 確定申告:売却で利益が出た場合や売却益に課される税負担を軽減する特例を使う場合などは、翌年に税務署へ申告する
親がすでに亡くなっている場合は、売却をする前に法務局で「相続登記」をし、名義を相続人に変更します。
2024年4月から相続登記は義務化されており、原則として不動産を取得したことを知ってから3年以内に申請しなければなりません。
登記手続きや売却後の確定申告は専門的な知識が必要です。
信頼できる不動産会社や最寄りの税務署、司法書士などにも相談し、必要な手続きを確実に済ませることが大切です。
まとめ
- 実家じまいは、親が暮らしていた家と家財を整理・処分し、家族の思い出に向き合う「心の整理」もともなう行為である。
- 実家じまいを始めるタイミングは「親が元気なうち」「施設の入居時」「相続発生後」の3つがあり、それぞれにメリットと注意点がある
- 実家じまいに関するトラブルを防ぐためには、まず親族間で話し合いをして方針を決めたうえで、家財道具の処分や不動産の売却などを進めることが重要
【コラム執筆者】

品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/