住宅購入予算の適切な決め方とは?

住宅価格は、一般的に数千万円ほどであり、多くの方が住宅ローンを組んで購入するため、予算を適切に設定しなければ、返済途中で破綻するかもしれません。また住宅購入の予算を決めるときは、住宅の本体価格だけでなく諸費用も考慮する必要があります。
本記事では、住宅購入をする時の予算の決め方をわかりやすく解説しますので、住宅の購入を検討されている方は、ぜひご一読ください。
住宅の購入前に予算を決めることが大切
住宅購入の予算を決めるのは、基本的に物件選びをする前です。予算を決めずに、物件探しを始めると、簡単に予算オーバーしてしまいます。
住宅は価格が高額になるほど、お部屋が広くなったり利便性が良くなったり、魅力が増していきます。あれもこれもと欲張ると、物件の価格はどんどん膨れ上がっていくのです。
無理な借り入れをして住宅を購入しても、マイホームでの生活が金銭面で苦しくなるだけでしょう。住宅を選ぶ際は、購入後も返済に問題のない金額をもとに予算を設定することが大切です。
目安はいくら?住宅購入資金の平均
住宅購入の予算は、世帯年収の5倍が目安といわれることが多いです。例えば世帯年収が500万円の場合、住宅購入予算の目安は2,500万円です。
ここで、実際のデータを確認してみましょう。国土交通省の調査によると、住宅を初めて購入する人(一次取得者)の住宅購入資金と平均年収は、以下の通りです。
◯一次取得者の住宅購入資金

※出典:国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査〜調査結果の概要〜」
※注文住宅は土地を購入した新築世帯
住宅購入資金は、新築住宅の購入者で年収の約5.2〜5.7倍、中古住宅の購入者は約3.3〜3.7倍となっています。ただし、上記のデータはあくまで平均値を比較したものです。世帯によって基本的な生活費や教育費などが異なるため、世帯年収の5倍の住宅を購入したからといって安心とは限りません。
加えて2020年12月現在、物件価格は新築・中古ともに高騰しているため、年収の5倍で購入できる物件は非常に限られてしまいます。住宅購入予算は、年収から考えた目安や平均値ではなく、ご自身の状況に応じて決めることが大切です。
住宅購入予算は今後のライフプランを考えて決める
予算を決めるうえで重要なのが、今後のライフプランを決めることです。 ライフプランを考えずに住宅ローンを借り入れてしまうと、毎月の返済が苦しくなる可能性があるためです。
例えば子どもがいる場合、高校や大学などへ進学するタイミングで、教育費が膨らんでいくでしょう。特に子どもが大学に通っている間は、年間収支が赤字となり、貯蓄を取り崩しながら生活をする世帯が非常に多いです。
よって、住宅ローンを返済しつつ、子どもが大学に進学したときに貯蓄が底を付きないような計画を立てなければなりません。
また、ご自身や配偶者の老後生活が始まったときに向けて資金を貯蓄する必要もあります。「老後生活には2,000万円の資金が必要」という話もありましたが、人によっては3,000万円以上必要となるかもしれません。
住宅ローンは、20年や30年などの長い期間をかけて返済をしていくローンです。今の生活だけではなく将来も考慮したうえで、予算を決めることが大切です。
●住宅の購入予算の決め方
住宅購入予算は、個人の年収や家族構成、住んでいる地域などによって大きく異なります。そこで、おおまかに決めた予算で住宅を購入した場合、将来的に老後資金で貯蓄ができているか確認するのがおすすめです。
例えば、以下の条件で架空のAさんが、3,000万円の住宅を購入した場合で考えてみます。
- 購入者:Aさん(30歳・男性・年収500万円)
- 家族構成:妻、子ども(2歳、1歳)
- 住宅購入費用:3,150万円(うち本体3,000万円、諸費用150万円)
- 自己資金:350万円
- 住宅ローン借入額:2,800万円
- 65歳までに積み立てる目標老後金額:3,000万円
住宅ローンの借入条件が、金利1.3%(全期間固定金利)、返済期間35年、元利均等方式で借り入れた場合、毎月の返済額は83,015円です。
※元利均等方式とは、毎月の返済額が一定である返済方法
毎月83,015円ずつ返済し、生活費や子どもの教育費も支払っていき、65歳の時点で3,000万円貯まっていれば、Aさんは3,000万円の住宅を購入できます。
しかし、老後までに3,000万円を貯蓄できないのであれば、Aさんが3,000万円の住宅を購入するのは難しいため、予算の見直しが必要です。
「子どもが小学校から私立に通う予定」「車を5年に1度買い換える」などの理由で、家庭の収支状況は大きく異なります。ご自身にとって正確な住宅購入予算を知りたい場合は、ファイナンシャルプランナーにライフプラン表を作成してもらい、将来の収支を予想すると良いでしょう。
住宅購入予算における自己資金と借入額の決め方
住宅の購入予算は、自己資金額と住宅ローンの借入額の合計値で決まります。それぞれの決め方を、確認していきましょう。
・自己資金
預貯金や親族からの援助などで多くの自己資金を多く準備すると、頭金に充当する金額が増えて住宅ローンの借入額が減り、利息負担や返済総額が少なくなります。住宅購入の頭金に充てられるのは、自己資金の合計から住宅購入の諸費用を差し引いた値です。諸費用額の目安は、戸建て住宅や中古マンションが物件価格の4〜10%、新築マンションは3〜5%といわれています。
諸費用の金額は、住宅価格や利用する不動産会社、住宅ローンを借り入れる金融機関などによってさまざまです。
また、預貯金の全額を住宅購入資金に充てるのはおすすめできません。ご自身やご家族が病気になった場合や、会社が倒産して収入が減少した場合に備えて、半年から1年ほどの生活費を目安に緊急予備資金を残しておく必要があるでしょう。
そのため、預貯金だけでなく親や祖父母から援助を依頼して、自己資金を増やせないか検討されてみてはいかがでしょうか。親や祖父母のような親族から資金提供を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税となる特例措置が実施されています。
●住宅ローンの借入額
住宅ローンの借入額は、金融機関が貸してくれる金額ではなく、ご自身が返済できる金額に設定することが大切です。金融機関が融資してくれる金額は、借り入れた人のライフプランをもとに決めているわけではないためです。
住宅ローンの返済額を決めるときは、家計の収支状況を把握し、住居費をいくら確保できるのか確認しておきましょう。家計の収支状況がわからない場合は、スマホアプリを使って、家計簿を付ける方法がおすすめです。
ただし、毎月の住居費のすべてが、住宅ローンの返済に充てられるわけではありません。例えばマンションであれば、管理費や修繕積立金などの支払いが発生します。戸建住宅を購入する場合は、将来の修繕に備えた積み立てが必要です。
また、借入時に10万円が返済に充てられるとしても、完済まで継続できるとは限りません。借入額を決めるときにも、今後のライフプランを考えて、最後まで返済を継続できるか確認することが大切です。
まとめ
・住宅を購入するときは、最初に予算を設定することが大切
・住宅の購入予算は、一般的に年収の5倍
・年収や家族構成、住んでいる地域などさまざまな要因で予算は変わる
・今後のライフプランを考えて将来的に破綻しない予算を設定する
【コラム執筆者】

品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/